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美幸と稜シリーズ

金魚②
 

 美幸と暮らし始めてもうすぐ一年になる。去年の今頃に二人で行った近所の夏祭り。金魚すくいに挑戦したけれど、二人して早々にポイを破いてしまい、一匹も掬えなかった。
 あのときおまけでもらった、赤い金魚のアカと黒い金魚のクロ。二匹は今、同じ水槽で仲良く泳いでいる。
 ――僕たちみたいだ。
 僕と美幸も、二匹の金魚に負けないくらい仲がいい。控え目に言って、この世の春。幸せの絶頂を日々更新している。
「稜君、こっち来て~」
 二人掛けソファーに座ている美幸が、自分の隣の座面をポンポンと叩く。
「なぁに、美幸? どうしたの?」
 美幸に呼ばれるまま、僕は美幸の隣に腰掛けた。すると美幸が僕の肩にコテンと頭を乗せてきた。
「アカとクロばっかりかまってないで、わたしのこともかまってよ」
 上目遣いとプクッと膨れたほっぺたが可愛くて、ドキリとする。
「ご、ごめん……」
 こういうときに気の利いたことを言えるようになりたいけれど、僕はどうしていいのか未だにわからない。

「ねぇ、稜君あのね……」
「うん、うん……」
 僕たちはたわいもない話しをする。
 美幸と過ごすこんな何気ない日々が本当に幸せで、今日も幸せの絶頂を更新していく。

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