top of page

小さなステンドグラス


 細い雨がしとしと降っている。道ばたのタンポポに、通りの街路樹に、くたびれた建物に、道行く人々。雨は等しく降り注ぎ、世界を濡らす。
 こんな日はどうやっても跳ねてしまう、母譲りのくせ毛が嫌になる。今日はぴょんぴょんとまとまらない毛先に早々に見切りをつけて、ポニーテールに結い上げてしまった。
 私は手にした傘を見上げ、持ち手をくるりと一回転させる。すると透明のビニール傘にプリントされた紫陽花も、くるりと一回り。
 紫にピンクに青の花と、葉の緑。カラフルな光が、私をすっぽりと包み込む。この傘はまるで小さなステンドグラス。
 いつもだったら憂鬱な雨も、この傘があれば楽しみに変わる。私はワクワクした気持ちで、また一歩踏み出すのだった。

bottom of page